高層マンションは永住の住処には不向き?!年々高まる「火災リスク」
基本的に、「住宅市場」は供給側の論理で市場が作られているといってもいいのではないでしょうか。
住宅を希望している側がどんな生活を望んているのか、どんな生活環境で過ごしたいと考えているのかという要素よりも、住宅を作る側(デベロッパー、不動産。施工者)が”利益が出て販売しやすい住宅”を常に供給し続けているといういうのが、今の現状だと思っています。
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住宅不足は当の昔に解消。現在は住宅過剰供給の状況に。
欧米の人々と比較して、日本人の住宅(住まうこと)に対する意識として大きく異なる要素と言えるのが、『新しい住宅に住まうこと』が当然のことと思っている、もしくはそこに高い価値観を有しているということです。
欧米の国々の多くでは、「新築であること」は価値観として高い要素とはなっていません。逆に、イギリスなど、歴史的な建物を保存しつつ、うまく現代生活の中で活用していくことに高い価値観を有しているような地域もあるほどです。
まあ、この違いが存在していること自体は歴史的な要素であったり、自然環境の違い(日本においては、大地震や津波などで繰り返し建物が壊滅させられてきた歴史があったりすること。)があることからも、ある意味仕方がないことなのだとは思っています。
ただ、現代日本では、戦後の経済発展期と異なり、都市景観はある程度安定化、別の言い方をすれば膠着状態を有する状況となっています。
『住宅不足』が常に課題となっていた時代は当の昔に終焉。現代日本では住宅過剰な環境となっていることをしっかりと認識しておくことが大切なのだと感じています。
住宅不足・土地不足が生んだ『高層マンション』は、住まいとして適切な住宅形態なのか?!
不動産売買上は、いまだに都心部及び東京湾岸エリアなどで高い人気を誇っている『高層・超高層マンション』。この高層・超高層マンションという住宅形態は、もともと住宅不足や土地不足の解消のひとつの手段として誕生したものでした。
限られた土地に、少しでも多くの人が住まえる環境(住宅)を作るということが最大の目標だったんですね。
それゆえに、『忘れ去られていること』『あえて見ないようにしている』要素となっているのが、「高層・超高層マンションは永住する住まいとして、適しているのか?」という住まいとして根幹的な問題です。
日本の生活環境・自然環境との共生を目指して作られた住宅ではなく、単に土地不足という課題から生み出されたもの。正直、住まいとして大きな課題が多々隠されている住宅と思っています。
近年、増加傾向にある高層・超高層マンションの火災。火災リスクの増大。
あまり、表だって語られることは無いようなのですが、年々「高層・超高層マンションの火災」は増加傾向となっています。
全般的な住宅火災件数としては、近年(過去10年推移)の推移をみるとほとんど変化なし・・どちらかというとやや減少傾向となっているんですね。
それは、住宅の防火対策(防火構造を有する住宅の増加など)が広まっていることが要因としてあげられます。
そんな中で、高層・超高層マンションの火災件数が増加傾向にあるというのは、住宅構造的な問題ではなく、「高層・超高層住宅」であることのリスクが表面化してきていると捉えることができるのではないでしょうか。
「火災による死亡リスク」という要素を考えた時にも、低層住宅(木造住宅)では、建物全焼してしまうリスクは高いものの、死傷者数という意味では、少ない傾向に。
しかし、高層・超高層マンションでの火災は建物全焼となるリスクは低いものの、死傷者数は火災規模と比較して大きなものとなる可能性があるのです。
高層・超高層マンションの歴史はまだまだ浅いもの。これまでは運よく、大きな火災事故などは記録されていませんが、いずれは、自然災害(地震、噴火活動、竜巻など)と合わせて、高層・超高層マンションならではの大規模な火災事故が生じることになるのではと危惧しています。
建築に携わってきた経験があるからこそ、感じるのは『高層住宅(マンション)は永住の住処とはならない』ということです。